「じゃぁ、行くね」
「ああ、こっちはオレに任せておけ」
「あれぇ? ずいぶんたくましくなっちゃってぇ」
「ユナ!」
「ウソウソ。信じてるから」
「おまえってやつは」
シュリが微苦笑する。
あたしは無理にひきつる頬をあげて、満面の笑顔を作って見せた。
帰る時間が迫っていた。
ううん。
自分の覚悟さえできれば、すぐにこの世界とはお別れできちゃう。
行かなくちゃいけないと分かっていながら。
あたしはなかなか踏ん切りがつかなくて。
こうやってシュリとくだらない言葉のやり取りをしようともがいてた。
その向こうで、青い髪の美人さんと騎士団が、組んずほぐれずの大乱闘を起こしてる。
「放してください、閣下! 姫様の教育係として、私も一度あちらのご両親様に感謝とご挨拶を」
「おまえが行ったらややこしくなるだけだろうがぁ!」
「まさか、あの美人さんがフランの双子のお姉様だとは思わなかった」
「ファリンは小さい頃からおまえの教育係として仕えていたからな。ま、ああいう暑苦しい性格だから。今まで会わせずにおいたんだが、爆発したな」
「っていうか、あんな美人が来たら、うちの家族だけじゃなくて、世界が混乱しかねないよ」
「そうか」