「まったく、おまえという男は強引なんだからな」
耳になじんだ太い声に、空を見上げたまま立ち尽くしていた銀髪の青年は、フッと強張っていた顔を緩めて振り返った。
その先には、彼よりも一回り以上大きな体をした青年が、苦虫を噛み潰したような顔をして立っていた。
「シュラに姫様を連れて行かせたのか?」
「ああ。疑いもせずにこちらの思惑どおりね」
「おまえ、ちゃんと姫様に説明しなかったろう?」
「そういうおまえも、見て見ぬフリしてただろう?」
「オレが出て行ったら、ヤツに疑われるだろうが! だいたいなぁ、おまえが一人で暴走するから悪いんだろうが!」
「暴走?」
カレンは『はて?』というように首をかしげた。
対するクラウスは大きなため息をつく。
「何の相談もなく、勝手に姫様の風呂に覚醒作用のあるハーブ剤を使いやがって! そういうことはちゃんと事前に相談しろよ! 何年付き合ってると思ってるんだ!」
「それを言うなら、やりそうだって思わなかったのか?」
「おまえなぁ、こっちの身になってくれよ。おまえのやることなすこと、フォローするの大変なんだぞ! 心労で倒れるぞ、オレは!」
「オレはおまえがいてくれるから、好きなこと出来るんだがなぁ。ああ、それとおまえが倒れたら、オレがちゃんと面倒みてやるから。安心して倒れろ」