リコの身の上話は続く。
「今まで、おばあちゃんと二人ぼっちで生きてきたわ。大学まで行かせて貰ったんだけど、おばあちゃん急に体悪くなったから…勉強どころじゃなくなったのよ。それで、大学やめて今、ここに至ったわけ……」
リコ…二十歳そこらで、そんな境遇背負ってきたんだ…可哀想に……。
狭くて細くて小さい肩が、俺には痛かった。
俺に出来る事があれば何でもしてやりたい。
今まで俺が見てきた厚顔無恥な女達よ、お前らに、リコの爪の垢じゃなく…現代風に言えば、ネイルの汚れでも舐めさせてやりたいよ。
「俺、出来るだけ店に来るよ。それが君の為になるんだったら…」
「佐々木君、ありがとう…」
リコの瞳は涙ぐんでいた。
閉店のミュージックがかかり、店内は明るくなった。
誠が会計を持って来た。
俺は支払いを済ませ、財布の残額を見た。
今日はイーグルから20万ちょろまかした。
タクシー代除き、後残りの紙幣を、リコの胸にそっと入れてやった。
「佐々木君、どうして、こんな事……」
「気にすんなよ。今日は俺、大勝ちしたからさ」
俺は初めて、女と言う生き物に惚れたかも知れない。