●佐々木仁●

「いらっしゃいませ」
ボーイがニコヤかに案内してくれた。

10回目ともなれば…俺も常連客の仲間に入りかな…キャバの常連なんて、あんまりいい響きじゃないけど……。

リコが、ゆっくりとした歩調で俺の席に来た。

この女は若いくせに、いつでも堂々と落ち着いていた。

今時のギャル系みたいに、飛んで浮くような行動は似合わない。

しっかりした態度とは正反対な細い肩…大人びた口調に愛らしい童顔…容姿と態度のミスマッチ…不思議なバランス……。

本当に会えば会うほど、この女は謎めいていた。

「佐々木君、今日は遅かったわね。もう来てくれないかなって思ってたわ」

「来るって言ったら、何があっても来るよ。ちょっと連れと会ってたから…遅くなったけど」

イーグルとホテルへ行った日は、どうしてもこの閉店1時間前にしか来れなかった。

早くハリウッドに行かなくては、早くリコに会わなければ…と思えば思うほど…イーグルの上で俺の気は焦る。

下半身の息子が、親の命令に従わない。

それでも何とか…目を瞑り、イーグルに過剰なサービスさせたり、リコの裸を想像してみたりと…俺は任務を果たす。