●本田直也●

イタ飯代が38000円とは、ちっと高過ぎないか?

人の金だと思い、高いワイン2本も空けやがって……。

まぁ仕方ないか…約束の10万と合わせて合計14万振り込んだ。

女とタダ飯食らい、寄り添って歩くだけで10万とは、全くいいバイトだよ……。

女と別れる時、俺は最近、この手をよく使う。

売れない三流のホストなら、喜んで引き受けるさ。

今回の女は、ちょっとばっかし長くもったもんだ。

久し振り自由の身になった俺は…風呂上がりにビールを飲み、ベッドで大の字になった。

可哀想な事をしたが、仕方ないや…初めからいたぶるつもりはなかった。

気持ちの流れのまま、こうなっただけの事さ。

恋する感覚はわかる…だが…愛の意味が俺にはわからない。

これは…ホストという職種からくる職業病かも知れない。

数いるお客の中で、確かに亜紀子はカワイイと思った。

欲情も失せる女とセックスする時は、妄想の世界に神経を置き、身を奮い立たせ、後は、妄想醒めないように気を付けながら、肉体の欲望に集中させる。

が…亜紀子には…こんな小細工な妄想は必要としなかった。