鍵穴…壊れた?
私は意地になった。
ドアのノブを引っ張ってみたり…でも、どうしても無理…。
ドアを叩いた…何回も…またインターホンを押す。何回も……。
機嫌が悪くなろうと、そんな事はもうどうでもよかった。
その時! インターホンのスピーカーから直也の声が!
「はい、誰?」
「私、私よ亜紀子!ごめんなさい、こんな時間に!」
スピーカーの向こうは無言……何か話さなきゃ……。
「直也~話を聞いて欲しかったのよ。寝ているのかなって思って…そっと入ろうとしたんだけど、鍵が、鍵穴が壊れてるみたいで…」
まだ直也は何も言わずに…黙っている。
と、息する音がした、その後、
「鍵壊れてないよ…昨日、元から交換してもらったんだ、新しいのに…だから、その鍵ではもう開かないよ」
私は唾を飲み…ゆっくり深呼吸した。
そして…スピーカーに向かって…哀願の声を出す。
「直也…ここ、開けて……」
一呼吸置き…返事が返ってきた。
「無理だ…連れが来ているから……」