●野田亜紀子●

仕事中、バイブがメールの受信を知らせた。

私は慌てて小走りで、トイレまで駆け込んだ。

エプロンのポケットから携帯取り出すと、ディスプレイに直也!

ずっと待ってた、やっと返信くれたんだ。

あの日から2日間…留守電とメールを何回も入れた。

部屋に直接行ってもよかったんだけど…恐かった。

押し問答になって、別れの方向に行くのが恐かった。

だから携帯で…ワンクッション置きたかった……。

私は恐る恐る…受信ボックスを開いた。

「もう言い訳なんて聞きたくないし、これで終わりにしようぜ。亜紀子、今までありがとうよ。また何処かで会っても、シカトすんなよな、じゃ」

何…何て事…これって今、どんな状況なの?

今、自分に何が起きているのかわからない。

どうすれば、どうすればいいのよ?

その場にしゃがみ込み、洋式の便器を支えに持った。

何かを掴んでいなければ、何かにしがみついていなければ、この不安の波にさらわれそう。

波にさらわれ…水洗トイレに流され…汚水処理場まで…心が持って行かれてしまいそう……。