とホテル街の路地を抜けた時、私の視界に直也が! 何で?
表通り出た所に、直也が! 歩いて来た。
アルコールのせいで幻覚?
思い過ぎて幻視?
首を横に振り、私は我に帰ろうとした。
しっかりしなくちゃ……。
でも、その幻は消えなかった。
幻は足を止め、じっと私を見ている。
目線が一点に合った。
これは幻じゃなく現実なんだ。
でも何で、ここに直也が?
それよりも…今、自分の置かれた状況を瞬時に読んだ。
横に男がいて、バックの景色はホテル街…それも明らかに酔った私は、SMに支えられていた。
動きの止まった直也が、再び動き始めた。
私の目から逃げ…歩き出した。
私は慌てた…SMを振り払い、直也を追いかけた。
「直也~ちょっと待ってよぉ~」
直也は無言のまま、スタスタと歩いて行く。
千鳥足の私は必死に追いつき、直也にしがみついた。
「直也、聞いて!これは誤解なの!あの男、今日、さっき初めて会って、デートしようと思ってた相手に振られたからって、私にご馳走させてくれって…ただの行きずりで…通りすがりなのよ!」
言い訳も終わらない内に、私は振り払われた。