私は慌てて、電話をかけてみた。

留守番応答の声が聞こえてきた。

とにかく電話ちょうだい…とメッセージを残した。

待っても着信音は鳴らなかった。

次はメール……。

「直也どうしたの?何かあった?今日は仕事も休むって言ってたじゃん。訳を説明してよ、連絡待ってるからね」

10分過ぎた…また10分…携帯は鳴らない。

私はその場にへたばった。

頭は空っぽ…胸はスカスカ…もう何の力もなかった。

怒りも…哀しみも…寂しさも…越えた空しさの世界……。

私の前に人が来た。

地面にしゃがみこんでいた私の前に人が……スーツを着た若い男……何?何なの?

「どうしたんですか?気分でも悪いの?」

その男は優しい表情を浮かべ、問うてきた。

「大丈夫だから、放っといて……」

私は愛想なく答えた。

男は穏やかに目を細め、口角上げて……

「なら、いいんだけどね…」

と立ち去りかけ…また目の前に戻って来た。

「誰かと待ち合わせしてるの?」

しつこい男……。

「誰も来ないわ……」

そうよ、誰も…直也は…ここにはもう来ないわ……。

だめ押しのように聞かないでよ…私は拗ねた顔で横を向いた。