あの時…私がジャングルジムから落ちていなかったら……。
あの夜…トイレに行こうとしなかったら……。
姉は…姉は生きていたかも知れない。
そぅね……私が殺したも同然なんだ…。
私が姉を殺した……。
父の女遊びは…そこでピリオドが打たれた。
3人の平凡で静かな生活が続いた。
父は、仕事が終わると真っ直ぐに帰宅…母は淡々と家事をこなしていった。
母は…父の体と心を取り戻した。
姉の命と引き換えに…生け贄を捧げたみたいに…母の心は穏やかになった。
姉は想像しただろうか?
自分の死が、父を真面目にさせる事や…それが、憎い義理母へのプレゼントになるなんて……。
それは、母にとっては贈り物になったが…私にとっては、心にずっと取れない一生の傷が出来た。
私は姉を殺した…。
中学、高校、大学、就職と進んでも…ふと一人になると、この傷が私を締め付けた。
夜が恐かった…一時でも忘れたい。
夜はあまり眠れなかった。
友達と飲み歩くようになり、それからホスト遊びを覚えた。
ホストは太陽の隠れている間、ずっと起きている。
一緒に起きていてくれる。