その時、目覚めなくていい母が目覚めてしまった。
「亜紀子、どうしたの?」
「何でもない、何でもないの」
その時、キッチンから微かな音が!
私だけじゃなく…母も聞いた。
母が立って行った。
どうしよう!お姉ちゃんが怒られるよ~
「泥棒みたいな真似して!この子は!」
母の凄い声が聞こえてきた。
私もあわててキッチンへ……。
母が姉を掴んで殴っていた!
「お母さん、やめて!やめてよ!」
母の背中にしがみつき、ありったけの声を出した。
母の折檻は止まらない。
無抵抗の姉は、私の方をじっと見ていた。
お姉ちゃん、私、告げ口なんかしてないよ!台所にお姉ちゃんがいた事、私がお母さんに言ったんじゃないから!
と…私は心の中で叫んだ。
その日も…父は家に帰っていなかった。
たぶん、あの女の家に違いないって…姉を解放した母は、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、ごくごくと煽るように飲んだ。
そして次の日…姉は……死んだ。
夜中にベランダで首をつり、発見されたのは朝だった。