私は何も知らずに、この世に顔を出した。

可愛い、カワイイと…両親の声が耳に木霊する。

私は、何をしても怒られた記憶がなかった。

欲しい物は何でも買って貰えた。

姉もよく遊んでくれて、優しかった。

母親が違うなんて…小さい頃は全く知る訳もなく、私は、心から姉を慕っていた。

公園で、姉と遊んでいた時の事…ジャングルジムから落ちた私は、意識を無くした。

次に目覚めた時、私は家の布団の中だった。

目の前に、母の顔…そして、その後ろに父がいた。

なぜか?お姉ちゃんがいない?

「お姉ちゃんは?」

母は何も答えなかった。

それより…私の意識が戻った事に喜び、涙ぐんでいた。

「亜紀子、亜紀子よかった……」

父も泣いていた…。

布団から出た私は、トイレへ行く前に姉を探した。

部屋に行くと、姉が背を向け机に向かっていた。

「お姉ちゃん~」

亜紀子、大丈夫だった? って飛んできて、抱き締めてくれると思っていた。

絶対にそう思い込んでいた。

でも…姉は背を向けたまま、振り返らない。

きっと気付いていないと思い、側に寄って行った。

「お姉ちゃん~」