●野田亜紀子●

直也とデートの約束をした。

本当に久し振りだった。
私が客だった頃は、食事もよく行ったし、恋人気取りで、映画やショッピング、バーやクラブにも行った。

それが正真正銘の恋人になってからと言うもの…もっぱら会うのは、直也の部屋ばかり。

鍵を貰った時は、有頂天に喜んでいたけど、この頃は、この鍵が憎らしかった。

時間をかけ煮込んだロールキャベツ…直也が美味しそうに食べる。

それから二人でテレビを見る…食後のだらけた時間。

毎日の日課だったエッチも…今は4、5日に1回ぐらい…。

緩んだ空気の中から先に抜け出すのは、いつも直也の方だった。

時間がくるとシャワーを浴びに行く。

その間に、私は溜まった洗い物を片付ける。

バスルームとキッチンから同時に流れる水の音…それは、その日の二人の別れのサイン。

シャワーを終えた直也は、身支度にとりかかる。

髪をセットして、ローションで顔を引き締める。

コロンを両耳たぶにつけ、しわひとつなくアイロンされたシャツを着て、ネクタイを締める。

上着を着てから、三面鏡で…様々な角度から容姿をチェック。