生と死の境目がわからない…これでは、死んでいるも同然……。

701号室……黒い海が……淀んだ空気が…私を呼んでいる。

   お父さん

   お母さん

   会いたい。

今からそっちに行くからね。

ベランダの下は海……そこに行けば会えるのね、お母さんに……。

その時! 携帯の着信音!

静かな一人の世界に鳴り響く音…さっきメッセージ聞いた時、留守電にする事忘れていた。

執拗にも鳴り続けるその音は…止まる事を知らなかった。

とにかく、携帯の音を止めなくては……。

私は部屋に戻り、携帯を手にした。

思った通り、野田だった……どこまでも、私を心配してくれている…こんな私の事を……。

私を哀しませないで……野田のメール文が脳を過る。

私は、電話を受けた。

「店長!もしもし!もしもし!」

電話の向こうで、野田が、張り裂けんばかりの大きな声を出している。

涙が…涙が…溢れてきた。

「…野田さん……」

「店長、生きてるよね!生きてんのよね!しっかりして!今、何処にいるの?」