父が好きだった…滅多に会えない父に会いたくて、憧れ抱き続けた。
それなのに…父は私の前から消えた。
母が好きだった…抱っこされた温もりを信じ続け、付いて行った。
そして、私は置き去りにされた。
佐々木に恋心抱き…抱かれ…愛した。
それから、佐々木は去って行った。
次は野田さん?あなたはどんな形で私から離れて行くの?
それを思うと、考えると恐い…本当に恐い。
雛人形を見つめ、私は思う…私は、人間の免疫が少な過ぎる… この人生で、関わった人間の数が少な過ぎるように思う。
人は皆、様々な人間関係の中に身を置き、上手く生きている。
親子、兄弟、夫婦、親戚、恋人、友達……人生の途中で巡り合い、いつか別れの時が来る。
一人と別れても…まだまだ他に繋がりある人間はいくらでもいる。
でも私には、哀しい事に、今は野田以外誰もいない… 恐い、野田が私から去って行く事が……。
この世で一番哀しい事は、話を聞いてくれる人のいない事です。
去られる前に、私から去ろう。
父と母と私、三人で行った最後の温泉、切な過ぎる思い出の場所に、そこに行きたい。
明日行こう…私は、雛人形に別れを告げた。