●吉田ひなこ●

野田の付き添いで、産婦人科へと行った。

生まれて初めて、この歳で訪れる場所…。

普段は何気なく素通りしていたここは…魂の生死が決まる神聖な場所だと知った。

私はお腹に手を当てて、死を宣告した…佐々木の分身に……。

  死んでくれる?

同意書などの書類は、野田の自筆で書かれた物を提出した。

前処置の為、手術前日に分娩台に乗った。

体勢の恥ずかしさと、子宮の痛みが私を襲う。

身と心と女の核に受ける痛みは……耐え難い。

何も知らない…痛まない…苦しまない…快感しか知らない…あの男が憎い。

何も知らずに…痛み…苦しむ為に…快感を知った…自分が情けない。

次の日…麻酔で麻痺された無意識の中で…佐々木の分身は、あっさりと綺麗に死んでくれた。

まどろみの中…ふらつく足取りを、野田が支え家まで送ってくれた。

あれこれと世話を焼いてくれ…この野田がいなかったら…私はいったいどうなっていたんだろう…と考えると…どうしようもなく怖くなった。