佐々木からは何の連絡もなかった。

まるで私の妊娠を知ったかのように、一切連絡は途絶えてしまった。

またお母さんの具合が悪くなった?

まだ、いい方に解釈して馬鹿じゃない!

あの女よ、あの女に決まってるじゃない!…もう一人の私が怒鳴る。

そして、アリスの面影を私は思い出す。


あんたのね、いつもしてるアップヘアーって自分の髪じゃないでしょ?

あからさまに茶髪のウィッグってわかってるんだから。

メイクもかなり濃い目、ファンデーションが厚過ぎるのよ。

相当、肌が汚いか、歳もサバ読んでるんじゃないの?

何よ、あの眉! 綺麗なカーブ描いてるつもりだけど、そこに毛がない事、私は見抜いているわ。

あんたなんかメイク落としたら、平安時代麻呂の世界よ!

ミニ丈から見える下着は何! スカート短過ぎ、それも計算ずくなんでしょ?

   このエロ女!

私のお腹には、佐々木の…佐々木の分身が宿ったのよ…。

返して、佐々木を返してよ……。

私は、雛人形に思いの全てをぶつけた。

親はいない、兄弟はいない、友達もいない、仕事もない、お金も……もう殆んど手元に残っていなかった。