●吉田ひなこ●

大変な事になった。

処女寺の寺を後にし、旅に出たものの、途中でお供がついてしまったかも知れない。

私は今、ドラッグストアのトイレ内にいる。

市販の妊娠判定薬スティックを買った。

家まで持ち帰る時間も惜しく、直ぐにでも検査したかった。

スティックに放尿後、運命の一分間、判定窓に出た。

スティックが教えた、新しい命の誕生を……。

こんなドラッグストアの洗面所で、それも何百円で買える妊娠判定薬で身ごもった事を知るなんて……。

神は私に罰を…これを罰と呼ぶの?

子供は神様からの授かり物だと、大抵の人にとっては喜び事だ。

でも…これは…私にとっては…罰以外、何物でもなかった。

鏡の私に問いかける。

ひなこ、どうするつもりなの、いったい?

あの佐々木の子?

あの憎い佐々木の?

金食い虫の?

あれが父親?

この子のお父さん?

まだ何の動きもしないお腹に手をあててみた。

女って不思議…子が宿ったとわかった瞬間から、自分の体を愛しく感じてしまう。

ひなこ、どうするの?

お腹にあてた手が答える。
生みたい、生みたいの……。