次の日も…その次の日も…同じコースが続く筈だった…のに…コースが変更した。
アラビアンナイト出た時、佐々木が言った。
「俺…今日は家に帰るよ、お袋が待ってんだ」
私にも、家へ帰れと目で命令する。
お母さん…入院したり、手術したり、退院したり…また入院したり…色々聞いてたけど…最近は家に帰ってたの?
そんな事全然知らなかったよ……。
それって本当の事?
もしかして、もしか…嫌な予感が…私の心を襲ってきた。
佐々木に出会い…男を知り…私はもう…メガトンでも処女寺の住職でもない。
れっきとした女に進化したの…だから勘も磨かれてきた…だから、わかるの。
お袋ではない…女よ…そぅ、あのアリスと約束が出来ている。
この男…あの女と今日寝るつもりだ。
佐々木は、タクシーに手をあげた。
車が停まる。
私は背中を押される。
押されるがまま、私はひとり車に乗せられた。
ドアが冷たく閉まり、運転手は行く先を待っている。
私の視界は暗闇…。
自由海は、とてつもなく冷たく黒く…恐い海だと気付いた。
もう、筏(いかだ)に戻りたくても、筏は流れどこにもなかった。