「アラビアンナイト」   源氏名 アリス

恋なんか…と思っていたのも束の間で……また…また俺は…心盗まれる羽目に落ちて行った。

まだオープンしたてのその店には、30数名のキャバ嬢がいた。

その中で、アリスは売上ナンバー1のキャバ嬢……私、他の店から引き抜かれて来たのよ…とアリスは自負していた。

28歳…ベテラン中のベテラン…俺より2つ年上の彼女は、歳から言えばキャバ嬢の中では年増に匹敵する。

でもここはホストと同様、実力の世界…指名をとり、売上してなんぼの世界だった。

誠に紹介されたものの、彼女は売れっ子…俺の席なんか5分としていなかった。

それがだ! 俺の錯覚か、新しい客獲得作戦かは知らないが、違う席から視線を感じた。

アリスが! アリスが?

アリスが俺の方をじっと見ている。

そして、俺も見つめ返す。

熱視線は火花をあげた。

その夜から、俺はシンドバット…アラビア通いが始まった。

 大蔵省はイーグル。