●吉田ひなこ●

私は、この戦争に負けた。

自分からは何があっても連絡するもんか…って、向こうから連絡がなければそれで終わりにしよう…って、見切り付け、新しい道に…って、決めていたのに……。

私の意地は砂で出来ていた。

浜辺に作られた砂の城……。

海水含んだ砂でかちかちに固め、固め作ったつもりが、一波にさらわれ、跡形もなく消えた。

ワインバーへ急がなくては、早くあなたに会いたいもの……。

もうどうなってもいい、佐々木に利用されていても、お金だけで繋がっていても、それが何なの?

お金なんて、私にとっては只の紙切れ……。

紙切れ渡して、佐々木が会ってくれるなら、二人が笑って幸せなら、それでいいじゃない。

真夜中過ぎ、財布に紙切れ20枚以上入れて、私はタクシーに乗った。

辛口渋めの赤ワイン……一週間振りの再会に乾杯した。

「出会ってから、一週間も会わなかった事って初めてよね」

「あぁ、そうだね…あれから色々考えたよ。俺…ひなこに甘え過ぎてたなぁ~って、正直言って反省してた…」

「反省だなんて…」

これが嘘でも構わない。