「待たせた。」

制服に着替えた神谷君が、また息を荒くして戻ってきた。


「行くか。」


そう言って、あたしの自転車のハンドルを握り押していった。


あたしも慌てて、自転車の隣に行くと神谷君が不機嫌な顔をみせた。


「な、なに?」


「なんでそっち?こっちに来いよ。」



そう言って神谷君の隣を指す。



「車道とか出たら危ないだろ?」


「う…ん。」


ゆっくり隣に行って、見上げると、優しく微笑む神谷君。


頭が熱くなって火照りそうになる。




あたしの家は自転車だからと言って、そこまで遠くはない。自転車で10分もかからないくらいだ。


それでも歩いてだと結構な距離。


「神谷君…家反対方向とかじゃないよね?」


「大丈夫。」


前を向いて、表情一つ変えずに答える神谷君。



…怪しい。