「あ。」
「…あっ!」
突然くるりと振り向いた神谷君に驚いてあたしは思わず、声をあげてしまった。
固まっている足を無理やり動かして自転車置き場に向かった。
見てるのばれちゃった…。
どうしよう、どうしよう…
気持ち悪いよね…どうしよう…っ
やっと、自分の自転車にたどり着いてカバンをカゴに入れて鍵を差し込もうと屈んだ時に、見えたシューズを履いた足。
「よ、嵩木。」
「神谷君…」
息を荒くして、噴き出した汗を拭った。
走って来たのかな…?
「何してんの…結構暗いよ?」
「え…、本当だ。」
辺りを見れば、さっきのオレンジ色の空が変わって綺麗な青紫色になっていた。
日番で少し遅れて教室を出て、その後神谷君に見とれて…そりゃ暗くなるよね。
「待ってて。」
そう言って、神谷君はまた走って行った。
「待ってて…って。」
意味わかんないとか、あたしはぶつぶつ言っているけれど…顔は真っ赤になっている事には気づいている。