佐野を覆うようにして抱きついている佐伯と
床一面に散らばった本があった。
『…佐伯が佐野をかばったんだ。』
そう,一瞬で俺は今の二人の状況を理解した。
………悔しい。
佐野を助けられなかった自分にイライラする。
…あの距離では俺が佐野を助けることは不可能だ。
だから,助けられなかったのはしょうがないことだ。
そう,自分に言い聞かせる。
分かってる。
頭では分かってる。
けど,やっぱり悔しい。
佐野を助けたのは
"俺"じゃなくて"佐伯"──…
その事実が自分に重くのしかかる。
…俺は二人のそばに行くことが出来なかった。