昼休みになっても,俺は佐伯の事が気になってずっと考えていた。


「おーい!!美桜ちゃーん!」


あっ……。佐伯だ!!



──ん?
今,佐伯のヤツ佐野のこと"美桜ちゃん"って呼んだっ!!

俺もまだ佐野のこと名前で呼んだことないのに……。


そこで俺の闘争心に火がついてしまった。


「ちょっと,国語の教科書忘れてさぁ。貸して欲しいんだけど…持ってる?」


「持ってるよ〜。ちょっと待ってね…」


佐野が教科書を取り出そうとした時…


俺は素早く自分の教科書を佐伯に差し出した。


「まじでっ。貸してくれんの?ありがとう!!(…俺は美桜ちゃんに借りたかったんだけどな〜…。)
ってか,初めましてだよな〜?」


そう言って佐伯は俺の教科書を受け取った。


「(よし。受け取ったな。お前の思い通りになんてなってたまるかよ。)
あぁ。いきなりごめん。
俺は春田 章彦。ソフト部だよ。」


「あー!!もしかして君が"ハル"!!?
噂通りイケメンだな〜。1回話してみたいと思ってたんだよ!!」


「俺,そんな噂たてられてんのか…。」


ちょっとショックを受けた。

ってか,俺がイケメン!!?
嫌味か!!?


「まぁ,よろしく−!!
あっ。俺の名前は…

「知ってる。野球部の佐伯だろ。」


「えっ!!何で知ってんの!?もしかして俺の隠れファン!?」


「いや,違う。」

俺は即答した。


「そんなに全否定しなくてもー…。まぁ冗談はこれくらいにして…,ハルモテるだろー?」


「はっ!!?いきなり何だよ。」

また嫌味か!!?


「いや,こんなにかっこいい上に優しいんだからモテるだろーなーって思って。」


「いや,そんなことねぇよ。」

ってか,お前の方がモテるだろ。


「またまた〜。
…っあ!ヤベッ!あと2分でチャイムが鳴るっ!!
教科書ありがとなっ!!
美桜ちゃんもまたねっ!」


俺は内心『もう来なくていいです。』って思った。