はたからみれば、
仲の良い姉妹の微笑ましい光景だ。

「ちょっと待てっ、
真希っ!」

いかんいかん、いつの間にか俺は空気と化している。
完全に忘れられたかのように。
あやうくのどかなその光景に浸ってしまうところだったぜ。

「なによ、何か用?」

「何か用?じゃないだろ。
無実の罪で殴られた俺に対して何か言うことはないのか?」

ナンパ師呼ばわりするは、殴られるはでは、
さすがに普段温厚な俺も腹が立たずにはいられない。

「人間が小さいわねぇ。
大の男が、
かよわい女の子にちょっと頭をはたかれたぐらいが何だって言うのよ?
もうちょっと心に余裕持ったら?」

呆れたように淡々と語って見せる真希。
……言われたい放題とはまさにこの事だ。
あのげんこつが『はたいた』ってレベルか?
下手したら脳内出血を起こしかねんぞ?

「なにが『かよわい』だっ!
誰が『女の子』だっ!
自意識過剰なやつめ」

「あたしよ、あたしっ!
このしなやかでやわらかな線はまさにかよわい女の子のそれじゃないっ!」