学食に来たのは何も初めてではないが、
相変わらずの光景に思わずため息、である。


「どうするの?
あれに並んでたら昼休み終わっちゃうんじゃない?」

真希がそう言う。
うむ、確かに。
普通に並んでたら、
昼休みまでに買えるどころか、
場合によっては自分のメニューが売り切れる可能性だってある。

「戦略が必要だな」

「ふーん、
なんか策でもあるの?」

「あたりまえだ。
この瑞沢零二、策無くして戦場には赴かん」

学食がこうなっていたのは承知の上。
となれば、
作戦は教室からここに至るまでに考案済みだ。
俺は真希を置いて、
戦場となっているカウンターへと歩みを進める。

「ちょっと、
あんたの策って、まさか正面突破?」

「んなわけあるかっ!
まあ、見てろ」

それだけ言うと、
俺は軽く息を吸った。

「もっちーっっっ!!
手を上げろっ!」

大声を張り上げる。
学食の戦いに全てを集中させている生徒は、
誰も振り向きもしない。