「ふん、違うな。
俺のフルネームを一度で覚えたのは後にも先にもたった一人っ!
瑞沢零二っ、お前だけだ」

零二のすぐ後ろに座るアイドル顔負けの甘いマスクの持ち主は、
大掛布崎 列道(おおかけふざき れつどう)。
特徴はその名前と容姿だけじゃなくて、
学園一といっても過言ではない天才的な頭脳、
そして類まれな運動神経という、
天は二物も三物も与えるの?という男。

「てゆーか、お前、いつからいた?」

「ふむ、
最初からいたのだが、なかなか気付いてもらえないから、
大きく高笑いをあげたまで」

「あはは、
案外存在感薄いね、掛布ちゃん」

「なかなかキツイことをさらっと言うね、森智恵美」

もっちーが誰にでもあだ名をつければ、
この大掛布崎は誰も彼もフルネームで呼ぶ。
どうでもいいんだけど。

「それよりも瑞沢零二」

大掛布崎が利き手である右腕を振り上げた。
それを見た零二が察したように同じく右手を目の前に差し出した。
すると大掛布崎の右手が零二のを目指して振り下ろされてがちっ、と握られる。