口を紡ぐ。
真希とこんな雰囲気になるのは、
ひょっとしたら初めてかもしれない。

いつもは冗談言い合ったり口喧嘩したりで、
お互いにスキンシップ感覚で接しあっている。

だからこそ、
今、この状況に少なからず戸惑いを覚えていた。

だが、真希もまたおそらく真剣に聞いてきている。

こんな状況をつくった俺の責任として、
俺も真面目に答えなくてはならない。


「俺は……いないよ」

短くはっきりと答えた。

「……本当に?」

「……ああ。
特に意識している子はいない」

「…………そっ……か」

俺は嘘を言っていない。
学校でクラスメートの女の子と話したりもするが、
それだけ。
一番近くにいる女の子は言うまでもなく真希だが、
正直、真希をそういう風に見たことは無い。
真希は俺にとって一番親しい親友で、
家族以外では一緒にいて一番リラックス出来る……って感じだろうか。
出来ればいつまでも同じ関係でありたい……というのが素直な気持ちだ。