「……?」

『馬鹿には何言っても無駄だ』
とでも言わんばかりの、
呆れたような、
気のせいかどこか拗ねたような表情。
何だよ、
聞いたときは悪態ついたくせに……。

う~ん、
女心とはよく分からんな。



「……あんたはどうなの?」

「うん?」

どこか気まずい雰囲気のまま、
二人歩いて、
ちょうど駅前と続く商店街に道が差し掛かるところで、
真希が不意に立ち止まって重苦しい空気を破った。
俺もどうしようか困っていたところだ。
自業自得だがな。

「どうって……何が?」

俺も少し遅れて立ち止まって、
一、二メートル後ろにいる真希と向き合う。

「何が、って……、
好きな人がいるかいないかって話よ」

「ああ……、
って俺に聞いてるのか?」

「そうよ、
人にばっか聞いといて、
あんたはどうなのよ?」

「お前は答えなかったくせに」

「あんたが答えたら私も言うわ」

妙に真面目な顔して聞いてくる真希。
俺は興味本位で聞いただけなのに、
なんでこんな重い空気になってんだ?