それでも。

「……」

四郎は立ち上がる。

もとより刀と素手。

不利は承知の上だ。

相手は幕末最強の剣客集団、新撰組の組長だった男。

苦戦するのはわかりきっていた事。

何より。

「…ほぅ」

藤田が薄笑みを浮かべる。

この窮地に立たされながら、四郎は笑っていた。

四郎はこの戦いを楽しんでいた。

死を目前にして、四郎はこの仕合に愉悦を感じていたのだ。

「俺の平刺突を前にして笑うか。ならば」

またも。

藤田が平刺突の構えを取る。

「全力の平刺突…受けてみるか…?」