その速度は最早、残像すら見える。

ましてや先程のように組み付ける筈もなく。

「つぅっ!」

迂闊に掴もうとした四郎の腕がその突進に弾かれる!

咄嗟に体を捻る四郎。

それでも。

「っっっっっっ!!」

彼の小さな体は、河川敷の端…土手の辺りまで吹き飛ばされた。

その飛距離が、藤田の突進の威力を物語る。

刀に触れられなかったのが唯一の幸運だった。

「運がいいな」

立ち止まり、藤田が刀身を肩に担ぐ。

…確かに。

運が良かった。

まともに平刺突を食らっていれば、貫かれる所か、上半身と下半身が別れを告げていたであろう。