やがて。

草を踏みしめる音。

西洋刀の鍔鳴りの音と共に、一人の男が河川敷に現れる。

警官の制服を纏った、痩せた狼。

藤田五郎。

幕末の餓狼、新撰組の生き残り。

「待ちましたよ、藤田さん」

四郎が呟く。

その頬には戦慄の汗。

しかし表情には不敵な笑み。

恐怖と歓喜が混在している。

こんな感覚は初めてだった。

「死ぬかもしれん仕合に、喜び勇んで足を運ぶか…お前も俺と同じ…餓えた狼なのかもしれんな」

四郎の前に立ち、藤田は腰の西洋刀をスラリと抜いた。

既に語る口は持たない。

左手に刀を握り締め。

「さぁ、殺ろうか」

藤田は構えた。