時間というものは不思議だ。

その者の精神状態によって、同じ時間が長くも短くも感じる。

ならば四郎の感じた時間は長いのか、短いのか。

愛する女のように恋焦がれた相手との決闘。

その決闘に待つのは、恐らくは命にかかわるような負傷による結末。

命懸けの仕合だ。

そんな仕合、いわば死刑執行に似ている。

本来ならば心構えも出来ず、狼狽している間に時が来るのが普通であろう。

しかし四郎には違った。

命にかかわる、運が良くても一生残る傷を負う事になるであろう、その仕合。

その仕合を待ち焦がれ、居ても立ってもいられず、約束の時間の数時間前には、道着に着替えて河川敷に足を運んでいた。

…川のせせらぎと吹く風の音に耳を澄ませ、精神を研ぎ澄ませる。

紛れもなく。

四郎は藤田との決闘を心待ちにしていた。