そしてそれは、意外にもあっさりと実現する事になる。

講道館道場。

「四郎」

稽古に汗を流していた四郎を、兄弟子の横山が呼ぶ。

「お前に客だ。何でも警視庁の警官だが…お前何かやったのか?」

「!」

無論警官と言われて、四郎に思い当たる節は一人しかいなかった。

汗も拭わぬまま、四郎は出て行く。

…道場の入り口、門の前に制服姿の痩せた男が立っていた。

穏やかながら鋭い眼光。

触れれば切れるほどの気配。

隙だらけのようでいて、組み付く事さえ出来ぬような立ち姿。

それは見間違う筈もなく、藤田五郎の姿であった。