明治十九年。

この頃になると日本もようやく平静さを取り戻しつつあった。

街には洋装と着物姿の人々が混在し、通りにはガス灯が設置され、立ち並ぶ店には牛鍋や珈琲の看板が見受けられる。

腰に刀を差しているものは、最早存在しない。

廃刀令により、刀と、武士の魂を失いつつあった時代。

その明治の日本の中心。

東京府。

最も文明開化の波に影響された街の一つだった。