物言わぬまま、距離を置いて睨み合う二人。

言葉などなくとも、両者の意志の疎通は出来ていた。

藤田は四郎の動きから彼の強さを分析し、四郎もまた、手の内を全て見せる事なく、半分以下の力で山嵐を放った。

共に警戒している。

何の約束もした訳ではない。

しかし、両者は互いを牽制し、決して自分の実力を悟らせまいとしていた。

全ては、やがて訪れるかもしれない決戦の日の為。

同じ戦場に対峙した時、己の本気の技を悟らせないが為だった。