小柄でありながら、自分よりも大きな相手にも力負けしない。

日頃の修練によって鍛え上げられた、四郎の足腰の強さ。

更には。

「!」

照島の鋭い当身(打撃技の事。柔術では打撃も認められる)も、四郎は素早い反射神経で回避する。

まだ四郎からは一度も仕掛けていないというのに、照島は早くも攻め疲れてきていた。

戸塚派揚心流最強とまで言われる照島を以ってしても、西郷四郎は全く苦戦する様子すらない。

「おのれ!」

再び組み付き、投げを仕掛ける照島。

今度は一本背負い!

だが。

「うお!」

投げの途中、照島は四郎を投げきれずに体勢を崩してしまう。

(な、何だ)

彼は一旦距離を置き、四郎と対峙する。

(まるで根でも生えているかのように…奴を投げる事が出来なかった…?)