試合場で照島と対峙する四郎。

その表情には緊張も気負いもない。

しかし、その表情が。

「!」

一瞬硬くなる。

四郎の目は対戦相手の照島ではなく、客席の警備の警察官…その中の一人、藤田五郎を捉えていた。

「……」

藤田もまた、試合場に立つ四郎の姿を凝視している。

その戦いぶりを余す事なく眼に焼き付けようとするかの如く。

やがて。

「時間無し一本勝負、始め!」

審判の声で、柔術と柔道の最終戦が始まった。

だというのに、四郎はまだ客席の藤田に気をとられている。

「小僧…!」

照島が一気に間合いを詰めた。

「どこを見ている!」