「警視庁武術大会?」

講道館道場。

柔道の稽古を終え、休憩していた四郎は、師・嘉納治五郎の言葉に目を丸くする。

「ああ…警視庁の三島警視総監の主催する、警視庁の武術大会に、我が講道館も参加する事となった。大会は他の柔術諸流派も参加する大規模なものだ。もしここで講道館柔道の名を知らしめる事ができれば…」

「……」

嘉納の言葉に、四郎は拳を握り締める。

嘉納の夢、講道館柔道を世に普及させる為の絶好の舞台。

そしてこれは、斯界で主流でもある柔術と柔道の全面対決の場でもあった。

まだ歴史も浅い柔道は、新参者として柔術の諸流派に目の敵にされている。

世間の注目も集まるこの大会で勝利する事ができれば、柔道の存在は確固たるものとなるだろう。

「四郎」

嘉納は四郎の肩を叩く。

「お前に期待している。是非お前の力で、天下に知らしめてやってくれ」