だがそれも所詮は夢想だ。

講道館は柔道、剣術との試合など禁じられるに決まっている。

四郎が決闘など許される筈もない。

ましてや相手は剣客警官。

こちらの…いわば喧嘩を買ってくれる筈もなく。

「……」

軽く頭を振り、四郎は歩き始めた。

今はこのような戯言に気を回している暇はない。

大恩ある嘉納先生の夢である、講道館柔道の普及に尽力する。

それが今の四郎に課せられた使命だ。

その為に柔道を磨いてきた。

その技を悪戯に力比べの為に見せるものではない。

帰ろう。

帰って、更に己を磨くのだ。

つまらぬ事に気を回している余裕などなくなるほどに。