しかし。

ギュ、と。

四郎は己の拳を握り締めた。

柔道と剣術。

この時代では決して交わる事のない武術同士。

だが出来うる事ならば、あの男と仕合ってみたい。

そんな感情が彼の心の奥底から湧き上がっていた。

実際に血生臭い修羅場を幾つも生き延びてきたあの男…新撰組三番隊組長・斎藤一に、血の小便まで流して修練を続けてきた自分の技がどこまで通じるのか。

群雄割拠の幕末でも名を轟かせてきた男に、己の技は通用するのか。

仮にも強さを追求する者として、誰しもが考えてしまう事なのではないか。

恐怖と共に感じ取れる胸躍るような高揚感に、四郎は武者震いが止まらなかった。