藤田が去った後。

「…ふぅぅうぅぅ…」

四郎は大きく息を吐いた。

…生きた心地がしなかったというのが、正直な感想だ。

確かに腰には西洋刀を下げていたものの、その柄にすら触れる事のなかった藤田。

しかし何という威圧感か。

まるで喉元に切っ先を突きつけられたまま話しているような、そんな緊張感。

抜き身の刃のような気配とは、あの男のような事を言うのだろう。

背中にはじっとりと汗が滲み、着物を濡らしている。

流石に、毎日のように命のやり取りをしてきた人間は違う。

ましてや、あの幕末の動乱を潜り抜けてきた新撰組。

その組長でも最強と目されていた男だ。

平穏な時代に生まれてきた自分とは訳が違うのかもしれない。