「あの」

四郎が真っ直ぐに藤田を見る。

「他に何か」

「いや…」

藤田は薄く笑う。

技は切れる。

確かに強い。

しかし所詮は太平の世の武道家。

幕末の動乱を生き延びてきた自分とは比べるべくもないか。

「呼び止めてすまなかったな。行って構わない」

「そうですか。では」

軽く会釈をして。

「失礼します。『斎藤一』さん」

「!!」

四郎の放った一言に、藤田は驚愕した。

「待て」

思わず呼び止める。

「…知っていたのか…?」