近づきつつあった物体が頭をしならせる。
相手の舌を切ったと云えども、普通の舌の長さではない奴の舌は綺羅を襲う凶器としては十分だった。
綺羅は攻撃に備えて、防御の体勢に入る。
斬ることはできない。
それならば、逃げるか攻撃をかわしていくほか方法はない。
だが、その攻撃に自分が耐えられるのかは疑問だが。
綺羅は体を低くし、腕を交差すると、自分の顔の前に翳した。
「ギエエエエエエエエ!!!」
雄叫びを上げながら突進してくる奴の攻撃に、綺羅は来るであろう衝撃に目を細めた。
だが、その瞬間―――――
『光は天(そら)へ、闇は地へ、おぞましき闇は光を解き放つ。夢幻解放(むげんかいほう)!』
どこからか声が聞こえてきたかと思うと、辺り一面が神々しく光り輝いた。
綺羅はあまりの眩しさに目を閉じざるをえない。
だから、この光がどこから放たれているのか確認することもできなかった。
「ギャアアアアアアアアア!!!」
耳に入ってくるのは、苦しんでいる物体の断末魔にも聞こえるほどの奇声。
だが、物体がどうなっているのか、それを確認することすら、目を開けることができない綺羅にはわからなかった。