痛がりのた打ち回る物体から微かに見え隠れするうっすらとかたどった姿。
それは、今まで巨大なイグアナに変形する前まで模っていた少女の姿だった。
それも幾人かの。
綺羅は唖然とする。
これが、自分を油断させるための罠なのか、それとも本当にあの少女たちは助けを求めているのかが綺羅にはわからない。
先ほどまであの物体と少女が別物だというように考えようと必死になっていたものが、またも自分を惑わせる。
「どうしろって言うんだよ!」
罠なのか、それとも自分に助けを求める霊なのか。
綺羅はただ叫んだ。
叫んだとしてもそれで解決するわけなどないのだが、こんな曖昧な状態では綺羅はあの物体を斬ることなどできるはずもなかった。
綺羅が戸惑っている間に、物体は体勢を整え、綺羅へと近づいてくる。
斬るかっ!?
一瞬はそう思うものの、その奥に見え隠れする少女たちの姿を見てしまうと綺羅の決意は傾く。
今までは悪霊を斬ってきた。
だからこそ、この物体を斬ることに躊躇いはない。
だが、少女たちが物体になんらかの形で捕まっているのなら、綺羅は彼女たちを救い、そして物体を斬る。
そうするように綺羅は教わってきた。
たとえ、少女たちが死んでいる霊だとしても、そこにも善と悪は存在していた。
来る!