このままじゃ、埒がいかない。





何度目かの攻撃をかわした後に綺羅は、手に持っていた剣をギュッと握ると踵を返す。





そんな綺羅に対して、全くの躊躇もなく物体は長い舌を綺羅に向けて勢いよく向けてきた。


綺羅はその攻撃をジッと見つめ、逃げることもなく足を軽く開き攻撃に備えて腰を落とす。


そして、舌が自分の間合いに入ってきた瞬間に足を一歩前に踏み出すと、自ら持っていた剣で振り落とした。


その瞬間、長く不気味な舌は黒い液体を振りまきながら、床へとボテッという音とともに落ちた。







 「ガアアアアアアアアア!」


舌を切られたことにより、物体は奇声を上げる。


そして、切られた舌を自分の口に納めながら、体をのたうちまわした。


「こういうやつらにも痛みとかってあるのか?」


あまりの痛がりように綺羅は素直な疑問を述べた。


そもそも、切った瞬間に黒い液体が出たことにも驚きだった。


それはまるで血のように綺羅には見えたから。







 『……す…け…て………』


「え?」


微かに聞こえてきた声に綺羅は辺りを見渡す。







 なんだ?


今の声は………





『助けて!』


今度ははっきりとした声が聞こえてきた。


だけど、それがどこから聞こえてくるのかがわからない。


綺羅はまたも辺りを見渡す。


すると、うっすらとだが見える違和感に綺羅は目をとめた。