綺羅が驚くのも無理はない。
目の前に現れたのは、先ほどまで少女の姿をしていたとは思えないほどの巨大なイグアナに似た形をした物体だった。
裂けた大きな口からは信じられないほどの長い舌がチロチロと揺らめいている。
これが、今まで少女の姿をしていた物の正体なのか?
霊なのだから、そうだろうとは思いながらも、あまりにもかけ離れた姿に思考が追いつかない。
どこをどうすればこのような物になるのか。
いや、そもそもあの少女の姿とこの物体が同じだと思うのが間違っている。
こいつは人を油断させるためにあのような姿になったに違いない。
そうだと頭ではわかっていても綺羅はなんとなく納得できなかった。
そんな綺羅の戸惑いを見透かしたように、物体はその長く気持ちの悪い舌を綺羅へと勢いよく伸ばしてきた。
ほとんど反射的に、綺羅は攻撃を避ける。
あまりの攻撃の速さに綺羅は床に転げるようにして体を起こす。
だが、その瞬間にドゴッ!というすさまじい音と土煙。
呆然と見ていると、今さっきまでいた場所に巨大な穴があいていた。
あのまま、逃げられずにいたら………
もしもの状況を考えるだけで、背筋に冷たいものが走り、綺羅は無意識のうちに自分の腕を擦っていた。
だが、ぼんやりとなどしていられない。
敵は綺羅の驚きなどは全く関係なく、攻撃を加えてくる。
「チッ!」
綺羅は敵の攻撃に舌打ちをしながらも、的確に攻撃をかわしていった。