実はこれまで綺羅が退魔した悪霊は、低級霊がほとんどで言葉を話す、これほどの気を持つものは初めてだ。


それもこの数。


一匹でもないこの多さ。


これがまやかしなのか、全てが本体なのか、その事実さえも綺羅にはわからない。








 俺に退治ができるか………?


深青なら、確実に退治できるのはわかっている。


はじめて会ったあの時だって、深青はたったの七歳だというのに立派に退治していた。


そうだ、あの時の深青はどうしていた?








 自分の身を守るために教えてもらったこの力。







 綺羅は自分が持つ剣をじっと見る。







 出会ったばかりの自分は何一つできず、目に見える異様な霊にいつ襲われるのかと怯えるばかりだった。


それを、光のように突然現れて退治した深青は、まるで神の使いのようだった。


あの時、俺は深青のようになりたいと思ったんだ。







 綺羅はキッと目に力を込めると、無数に増え続ける霊を睨みつける。







 先ほどまで、うろたえていた綺羅の変化に何かを感じたのか、一番先頭に立つ少女の霊はあどけない表情で誘っていた顔を豹変させる。


「キケン………。おまえは………キケン…」


『キケン』とまるで壊れたロボットのように何度も繰り返す霊。


「キケンキケンキケンキケンキケーン!!!!!」


何度も繰り返した後発狂すると、霊は突如黒い靄に包まれる。


綺羅は自分にまでかかりそうになる靄の闇を剣を振り回しなんとか避ける。







 バッと飛びのき、入ってきた扉に背中をつけると、黒い靄はゆっくりと晴れていく。


それと共に、現れた姿に綺羅は目を見開いた。







 「な、なんだ? これ………」