ゴクリ………
綺羅は無意識のうちに生唾を呑み込む。
額にはじんわりと嫌な汗が浮いていた。
それとは逆に体は妙に寒い。
この場合はどう対処すればいい?
別に自分の力を過信したわけではない。
真里に言った言葉は全て真実の言葉だった。
だけど、それは自分が今まで遭遇した出来事を踏まえた上で、想定内のことだと思ってのことだった。
だけど、今目の前にいる物体は明らかに言葉を発した。
綺羅のこれまでの経験で霊が言葉を発するということなどなかった。
だからこそ、うろたえる。
自分の想像以上の霊の存在を目の前に綺羅は昔聞いた言葉を思い出す。
『霊にも属性もあれば、強さの段階というものがある。低級霊は人に憑いたり、悪いことをするが比較的それほど人に害をもたらすことはない。霊気も弱ければ、この世に存在する存在自体が薄いんだ。それを、一瞬で見分けるのは非常に難しい。だけどね、一つだけ霊が強いかどうかがわかることがある。言葉を発することができる霊は存在が濃い。つまり、この世での影響力と共に霊気も強いんだ』
あれは、あの言葉は深青のお父さんで、俺の師匠でもあった如月道隆(きさらぎみちたか)の言葉。
綺羅は信頼する道隆の言葉を思い出し、息を呑む。